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単位の履修だって、ぼくはもう抑えきれない。この衝動をどこにぶつければいいのか、っていうね。

 衝動なんてないじゃない、ただ重いから軽くなりたいだけなんだ。水を飲みたいだけなんだ。人の心を泳いで行きたいのだ、たゆたって生きた、怒っている人がいる。声が聞こえた「ばかやろう!」馬鹿はどっち?きみかぼくか、この世の中か。どっちかわからない。けれどもね、たしかにね。飴と鞭をしゃぶらせてるようなもんだ。味なんてわからない。苦痛に耐えなくちゃならないから。飴を美味しいだと思えるのならば、それはすばらしい。それはそれで。

 僕がやる事はもう、ただ、深めていく事でしかないのかもしれない。もう、君たちにゾッコンっていうわけにはいかないんだ。ぼくは家事がいやだったわけじゃない。もっといえば、奴隷根性に決まってる。かるくならなくちゃならない。赤裸々な告白は慎まなければならない。それは、疲れたら水を飲むように、気持ちが悪い時はお酒を飲むのをやめたり、かわりに水を飲んでみたり。そういう感じである。

 長男長女的な奴らの相手もしなくちゃならない。一応人間だ、つきあってやってやらなくちゃ。説教。はいはい、わかりました。人を従わせる事が功績だと思っている。そんなことはないのにね。っていうのは通じないんだ。頭が硬いんだとは言わない。視野が狭いとも、心が狭いとも、言わない。愛らしいんだ。そういうのは、かわいらしいんだ。いったいどこがだってことだけど、世間ではそうなっているらしい。

 ふうん、そうかいそうかい。世間ではね、そう処理しなくっちゃだれもが自分の気持ちに正直に生きているわけじゃない。どこからか命令されて、それに突き動かされている。え?自立している人間、自分に正直な人間だってもしかしたら、「無意識」の領域で結局は誰かの命令で動いているんじゃないの?たしかにそうなんだな。ただ、それを口にしないってところだけが今の所取り柄なのかもしれない。取り柄というほど褒められた事でもないのになにを言っているんだろう。

 僕が生きるべき道、というより、僕が関わるべきは、工事現場ではない。決してない。まして、コンビニでもない。あそこはうるさすぎる。もっと繊細なところなんだ。気を遣ってもいい、ぼくはもっと繊細になってもいい。女の人に譲るなんて事しなくていいと思うんだ。

 

 「ダーリン、また変な事を考え始めたのね。あなたの話きいてるとおもしろいけれど、長くなると眠たくなっちゃうの。もっとききたいとは思わないわね。なんだか、抽象的で、眠くなっちゃう。小さいころママもよくお話ししてくれたら。王子様がツバメと死んじゃうお話だとか、ガラスの靴が階段を転げていくはなし。あなたの話って、なんかこう、告白なのよね。絵本にならないのよね」

 

「絵本を売って、世界中の瞽に読ませて同情を乞い金を得るって手法は僕はやらないよ」

 

「儲かればやってもいいんじゃない?」

 

「いやだ、僕はしたくない。たとえ儲かっても、二回目はないだろう。二回目からは苦痛だろう。書きたくない事をたくさん書かなくちゃならない。その言葉の責任はどこにあるの?」

「あなた、何を気にしてるのよ。あなたはお話を書くの。何も、こうすれば儲かる、苦しみが取れる、あの店の何が美味しいって話をしてほしいわけじゃないのよ」

「それでも、僕には出来かねる」

「きっとお話を書く自信がないからね。想像力もなければ、人と会話する時に得意満面になって周りを引きつらせるのもあなた。あなたって本当だめねって、いわれたいんでしょ」

「たぶんそうだ。いままでそんなこといわれたことなんてないからね」

「わたしも、いわれたことないことたくさんあるな」

 

僕は時々思う。僕は本当に生まれた時から死ぬまで、という強調表現を用いたいほどに、おそらくは、けっこうがさつでどうでもいいひとなんだ。しかし、どうでもいい人の生活ぶりを見ていると不幸だから、どうでもよくないといっているだけなんだ。しかし、それはぼくにかぎったことか?ニュースはいい事を勧める。悪い事をすれば監獄へお強いられるってね」