引力

 引力から逃れるには引力を取り除く他には、引力に逆らう必要があるんだろう。その必要性は誰も感じちゃいないけれど僕は書き続けるためには引力を考えないわけにはいかない。惹きつけられて粉々にされてそれで、疾走する僕の風が大気にとどまって生物を養う。電車の火花も猫の死骸に感電して白くなった髑髏が置かれてるお墓の前で老婆は黄色い花を手向けて見返す都会の景色に弔いの眼差しを掲げて。

 バイクで走れば、理由もなく楽しくなることがわかるということを僕は言葉で伝えるようにしなくちゃならないという社会からの、そして何かからの要請により僕は無理を承知で書き続けなくちゃならない。僕の人生で起こるべくして起こる貧困をどう回避するのかについての今の僕の思考が全ての楽しみを奪って僕をますます貧困に追いやっていく。僕はこの罠にはまることが一つの悦楽でもあり社会的な物語の中で僕が慣れ親しんだ一つの章に書かれるべきだという思い込みをどう吐き捨てれば僕は生きられるのだろう。疾走する山の中見渡す景色は流れて一輪の黄花は流れに揺れる。

 僕の目に映る景色が僕に語りかけてくるには僕はその言葉を解釈して揺れなくちゃならないわけじゃないことを訴えて自己主張しなくては適切な距離感とその景色を壊すだけの殴り合いができない。惹きつけて股間を蹴り上げ髪の毛を下に引っ張り頭を下げさせる。そして、僕たちは元気になるのさ。いつだって暴力は人間に与えられた能動的作業でしかないのだから。世の暴力に対して暴力のなさを訴えてみたところで暴力は暴力として執行され続けるであろう。

 ここでいう、まあ野蛮ね。こんな人には近づかない方がいいわ。ああ、やだやだ。流せばいいじゃない。無視すればいいじゃないの。冗談じゃないの。

そりゃこっちのセリフだっていう、僕にいるもう一人の冷静な僕。太陽星座牡羊座の僕には月星座に蟹さんが住み込んでいる。羊が暴走を始めると蟹がハサミでチョンット足を切る真似をする。

 ところでどっこい、空梅雨だ。雨なんてフリャしない。トイレの水が出れば結構。空梅雨さえ金になる。どこにお金があるんだ。読み込まなくちゃいけない。ニュースの伝えていることを解釈しなくちゃならない。解釈と咀嚼は一緒だろう。珍しく僕なりに人間の音叉をめぐる脳の反応から引き出したこの画期的なる解釈を誰からも支持されないままで。

 

 僕がどうなったって僕は実はどうでもいいんだなってこともわかったんだ。これだけ不幸になれて仕舞えば、不幸であることも苦痛じゃないということがわかってしまったんだ。わかってしまったというのも嘘さ。僕の言葉は嘘ばかり、冗談農法がまだマシだと思えるようにできているこの文章の構造を精神科医に見せたらこう言ったというのさ。

 

「君は頭がいいからどうしても頭がいいからこんな素晴らしく適当な私的な文章を書いちゃうんだ。症状名としては、若年性痴呆症といったところか。人が一生かけて学ぶような感情を君はもうその年にして、齢にして、体験しちゃったから近代の平均的人間を作り出す装置とその出来上がりを診断する装置である計量系のメモリは振り切って、壊れちゃうからどこかへ行ってくれ。2度とかを見せないでおくれ」

 

小林秀雄ならこう言うだろうと、くだらねえ、こんな文章。読んでられない。幼稚だ。つまらねえ、くそ。殺すぞ。馬鹿野郎。近代なんてわかっちゃいないくせに、わかってもない言葉を使うんじゃないよ」

 

僕たちは思う「君の口にたがをはめているのはなんだ。君の職業的倫理観回。君を労働へ向かわせるための嘘かい。人々の賞賛かい。君の心は誰の承認を求めてその唇を預けているのかい。僕にキスしてくれ」

 

僕は啓発もしないし啓蒙もしない。客観的でもないし、主観的でもない。技巧的な文章だって、それは人に嘘をつくときの文章だ。嘘なら僕だって言える。心の底から。だから、それが嘘か本当かわからないんだ。かわいいとは思わない。けれども、そういってほしいのならば可愛いと思うだろう。芝居さ。嘘なんてつく必要もない。だって心の底からそう思えるのならば、それは本心だからさ。嘘だと思いたいだけだ、君が。僕は、そんな嘘のつき方ができない時もある。できるときもある。じゃ、嘘ってなんだ。異質なものを目にしたときの攻撃性である。相手にはわかるんだ。これは嘘だって。あの人の目を見よ、面倒くさそうにしている。その態度は体力のなさと不誠実を表している。人は過度に疲れてはいけないんだ。過度な休息が必要かといえば、二項対立の罠にはまっていると指摘してやる。誰が首尾一貫した文章を書けるだろう。そんな文章誰だって書ける。自分の嘘に我慢ができる不誠実な人間ならば。

 

弁護士と文盲が言う「じゃ君は誠実なんだな。君の文章は誠実なんだな。それとも誠実な文章を書いている、または、そうよの人に認識されるような文章を書く僕たちに嫉妬しているのかい。君はかわいそうだね。そんなことしたってお金にならないよ。嘘だってつけるってのが頭の柔らかい証拠さ。君はバカだから、一つの考えしかできないんだよ。君はモテないだろう。そうだろうな。それに、自分をいい人だと思っているんだろう。鼻につくよ」

 

僕は言う「君いうことは至極正解だ。だから君たちは世の人から賞賛を得ているのだ。多くの時間を割いて世に称えられる文章を書いてる。僕はバカだ。バカだから金がいいとも思ったことがない。何がいいものなのか、ものの価値がわからない」

 

君は鼻につくよ、分からず屋は死んじまえ。

 

僕はかわいそうだ。あまりにかわいそうだ、逃げ込む乳房はどこにだって転がっている。それを轢き殺すトラックのお兄さんが僕に卵を投げつけてくる。ハロゲン電球は僕の体を乗せて記憶も思い出も未来も全て投げ捨ててこの世との細い細い糸を切ってしまう。どこへ行くこともできず成仏もできず花も手向けられる忘れられる。死に方もわからず死んでしまって、僕はどこに行くこともできない。そして現れる、幽霊となって。

 

なんてジメジメした人間なんだと思うかもしれない。これは僕がこう言う人間だということを暗示していると捉えないでほしいといっても無理なことなんだろう。