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 彼女は足を組んで眠っている。聞こえる洗濯機の回転音。波音。風に流れて潮の香り。ここはどこ。海から近いのだろうか。夏雲にお腹を膨らませながら信号機を曲がっていく。町を走り抜ける車。海を目指す。たどり着いた防波堤。遠くには大きなブリッジ。ギラギラの海。眩しい。余計に暑くなる。気持ちが、抑えきれないくらいに膨らんで僕は頭が止まってしまった。占いで言うと今はいけない時期らしい。聞こえる着信音。誰と通信しているのか。僕は積極的に連絡していない。うるさい着信音を消すくらいの静けさを持っている。自慢にもなりはしない。結局寂しい人なのね。それだけ。誰が孤独の楽しみを覚えようとするだろう。起きているのだろうか。動く足の親指。彼女は足を組んで寝たまま。キーを打つ音が部屋になる。彼女の鼓膜を転々とノックする。決して起きて欲しくはない。起きたとしても・・・気にはしないだろう。朝、明日は雨らしい。そこで、ひっそりと言うのだ。昨日何してたの。否、何も言わないかもしれない。取るに足りないことだと彼女の意識が判断する。彼女に意識はあるのか。ありすぎるようだ、しかし、それも彼女の罠であるように思われる。喋れば振り向いてくれる。そんな時期も過ぎようとした。僕の携帯にメッセージが。どうすれば、僕は救われるのか。救われても罪悪感が残るであろう。この国は本当に息苦しくなった。経済を生きる第一目標にした。資本主義社会おいて貨幣は欲望を抑えもする・・・。おっと、また僕は慣れない社会評論なんぞ書こうとしている。安部公房を見ていても、彼らは自信がある。本が売れたことからくる自信ではないはずだ。売れなければ自信がないのならば、一生売れることはなかっただろう。売れるか売れないかは、自身のあるなしと関係があり、本が売れて自信が増すことはあろうとも、自信が生まれることはない。断言すると否定したがる控えめな人がいる。彼に問いたい。君の髪は奇抜だ。鉄板で焼いて死人に食わしてやりたい。僕の髪じゃ短いから喉に詰まることなく、毛先が喉をひっかいて痒くさせる程度だろうから。僕は天才だといい続けること。中原中也は結局仕事につかず親の仕送りの中子供を作り育てそして、死を看取った。彼自身も子が死んですぐに死んだ。僕には手をつないで歩く子供がいるか。女を知った男ならば、男を欲しがるだろう。女に欲情しか覚えない男には、女が似合うだろう。こればかりは産み分けもできない。乾くコンタクト。喉は清涼飲料水の中に置いてきた。心はどこに置いてきた。見つけられるか。なくした家の鍵を交番へ届けるのも億劫だ。どこへ行った。落としてばかり。なくしてばかり。記憶力が悪くなった。思い出を頭に乗せた盆から溢れる水のように、僕はゆっくり歩く。天才だ。三島由紀夫も言っていた。結局天才であるという確信があるのみだと。夏目漱石は言う、健康な魂は健康な肉体に宿る。ならば。天才は天才といい続ける人間の脳みその宿る。どうも歯切れは良くない。ええい。この際、勘弁いただこう。高畑淳子が、息子の罪を下世話な報道陣の前で説明した時しきりに、ご容赦願いますと言った。いい言葉だ。結局、ご容赦願うしかないのだ。僕の此れ迄の行い、ご容赦願います。これからの僕が重ねるであろう罪にも、ご容赦願います。青空を流れる白い雲を見て僕は仲のいい友に言った。あの雲が動いているかもしれない。動いているのだ。しかし、嘘はつきたくなかった。僕は嘘をつかない代わりに無口な子供だった。行動でいつでも示した。喧嘩では、言葉なんて信用しない。相手の腕に噛み付いた。一人っ子だから、兄弟がいないから、だからなんだ。みな上手にこじらの絵を描いた。しかし、俺はゴジラなんて綺麗に描けない。困惑した。怪獣なんて見たことがない。描けないが、描くしかない。適当に描いたら展覧会に飾られた。それだけで、俺は絵に自信を持つ一生の資格を得たのだ。土台、誰がニトリの社員になりたいか。間違って家具を買う人間が悪い。作るのは工場の人間だ。思い入れも何もない。物質もまた、沈黙を強いられた。人間は静かに買い物するようになる。買い物を楽しむのではなく、所有を楽しむようになれば人間は楽だ。僕はどっちも嫌いだけどね。切っても切れないような関係だから。天才は、自分を天才だと自惚れている。自惚れは美しい。傲慢だと、誰が避難できよう。ならば、傲慢になってみろ。やれ、仕事の話、やれ、祖先の話。君の魂は、誰に便りを求めているのか。一人はなんと頼り甲斐があることだろう。おしゃべりはバカだ。喋れない人間をバカにしている。自分の話を聞いてもらえると持っている。それでいいのだろう。ああ、ニコチンがあれば気も晴れるか。脳の血流が一時的にでも良くなるだろう。僕の脳は飽き飽きしている。グズグズしている。動きたがっていないのだ。どうしてだろう。動けば傷つくことを知っているのだ。そう不安なんだろう。不自由だ。自分は自由だと感じていた。しかし、いつの頃からか罪を背負い不自由を感じていた。この重荷を取っ払っても罪が軽くなっても、自分の想像の罪を超えることはないだろうと想像はできるのだ。すべての産物は我にあり。それも荷が思い。宗教だ。神が我を作り、我の罪も作ったのだ。神を殺せば永遠に人は許されず罪も軽くならない。人に頼りがちで、孤独をひどく恐る。なんとも、大勢の家族に育った人間は苦手だ。人を空気のように思っている。想像力も貧困だ。特に思いやりが。しかし、思いやりなどいらない。そんなもの捨てればいいのだ。相手がすごけりゃ褒めとけばいい。めんどくさいことになってきた。グレーゾーンばかり増えてきた。もうなんでも良くなってきた。だから、願いは叶わない。力は分散して、嘘がつけなくなってくる。寛大な心のなせる技か、弱さか。彼女のストレスを思えば・・・。余計なお世話だろう