アウトプット

相手の視点に立ってみよう

神さま

 悪魔は私を見ているのでしょうか。仏教は私を救ってくれるのでしょうか。何もかも諦め、生きることは意地汚いと。世の中は希望に満ちているはずです。それが見えないだけですよね?私には見えないだけ。皆には見えているのに。取り残された私は、暗い森の中の漆黒に身をゆだねるのです。

 私がもっと言葉を多用していたら。私がもっと自己主張していたら。世界は変わったのです。でも、私は遠慮してしまいました。それが最大の過ちだと今になって気づいても、遅いのです。今はただもう、業火に焼かれるだけです。

 時はきました。遠い過去より夢見た地獄が今宵、眼前に広がっているではないですか。横たわっているのは、地面を這い回り溶岩を目指しています。肌は溶け、髪の毛は全て焼かれ、頭には皺が押し寄せて、水を求めて、火口を目指しているのです。

 神様、あなたは私にふさわしい罰をくれたのでしょう。そう考えないわけにはいきません。私のしたことが、私にそっくりそのまま帰ってきました。あなたを恨まないわけにはいきません。私と勝負をしてください。私はあなたと闘い、潔く散りたいのです。決して、笑いながら「愉快な人生だった」とは言えないでしょう。目には涙が溢れて、私は悔しくてたまらず泣いてしまうのです。世の儚さを嘆くのです。

 神様、わたしは酷い人間でしょうか。どれだけの報いをうければいいのでしょう。限度を超えて私を試しているのでしょう。遊びにしては度が過ぎています。わたしはもっと耐え切れるかもしれません。でも、疲弊しきってもう阿呆になってしまいます。動けなくなり、地面に付して死ぬのです。硬い灰色のコンクリートの上で。

 ああ、神様。私は十分に報いを受けるのに、あなたの刃が必要です。どうか、わたしを突き刺してください。真っ赤な血が空から雨になって地上に血だまりを作ってください。どうか、わたしを突き刺して、わたしをあなたのいる世界に住まわせてください。

 この願いも、受け入れられるのでしょうか。阿呆になったわたしには、十分贅沢な願いですね。神様も忙しいでしょう。順番におやり下さい。わたしに構うことはありません。わたしが神なら、わたしはわたしを突き刺せるはずです。でも、できません。だから、あなたに委ねているのです。あなたになら、刺されてもいいのです。痛みも堪え切れるかもしれません。泣きわめいても、無感覚よりはマシです。

 今、世界は知ったかぶりに溢れています。古代ギリシャ人が大好きです。彼らの素朴な論理的思考は自由奔放で創造的で美しいのです。ギリシャに夢見て、わたしはこの世界にさようならをしたいのです。物を考えない。いかに決められた軌道を外さないように生きるのか。人間がいません。この時代に、人間は嫌われ者です。わかりますか。あなたが作りなさった人間が今、厄介者にされているのです。欲望の奴隷になり、人間性を失っています。社会に、その正当性を持たせようとしたのです。あなたを殺したつもりになってね。でも、あなたは死んでいません。死んだふりだってできるのです。社会は調子に乗って科学ばかりやっています。中毒状態です。科学的であれば何事も正当性を持っているとみなされます。

 わたしは耐え切れないのです。この世界の傲慢さに。会話は同じ。皆が自由な考えを微塵も持たず、挨拶のようなコミュニケーションがなされる。同質性に価値があり、差異に価値はないのです。付加価値よりも、共有です。共有することが、楽して物を手に入れ楽して物を捨て去る都合のいい概念として広まり、今後もっと共有されることが増えるでしょう。一方で、物は買われなくなります。それで結構ですが、その次に来るのは何か。人々を説得するためのお話が来ます。君は美しくないから、美しくなりなさい。この命令に突き動かされ、みな苦しんでおります。

 どうでもいい話をしてしまい、申し訳ありません。あなたの傍で眠りたいのです。神様。きっとすべてを愛せるのでしょう。わたしには愛する能力がないのです。まったくないのです。だから、言葉で愛を伝えられないのでした。どこか、嘘だなということ。そればかりが、わたしの脳裏に焼きついています。わたしは嘘ばかりついて、そして、地獄の入り口に立たんとしている、ただのにわかなのです。殺人もしていない、強盗もしていない、悪いことを何もしていないという無自覚が、わたしを地獄へと駆り立てるのでしょう。ソクラテスが無知の無自覚を説いたのならば、神は、悪の無自覚を説いたのでしょう。誰もが、自分は善人だと思い込んで、わたしは悪くない悪いのは相手だと言い立て始めます。悪の自覚がたりないからです。一生、非を重ねながらそれでも生きるのでしょう。

 神よ、私に取り憑いてくれ。私の心は、あなたのためにたくさんの空間を用意している。私は入れ物です。私は器です。あなたのためにスペースを取っています。そして、私ご動かしてください。崖から突き落としてください、森の中で宙吊りにしてください。誰にも知られずに、死ぬなんてことがないようにしてください。死に価値はあります。ジョンレノンも死ななければ、忘れられていたかもしれません。愛の中死んだ彼は、雪の降る12月の8日に神の遣わした男にピストルで殺されてしまったのです。銃弾には神が雇っていたのかもしれません。ジョンレノンの命を奪い、永遠を彼に与えるためない。彼の美しい旋律が永遠になるように。とこしなえな愛を与えたのです

 私が愛した人は、もう私を愛していません。私は愛から遠ざけられ、私を愛してくれるのは再びお金だけになったのです。それを羨む人間たちとも大勢会ってお話をしてきました。運がいいね。親に感謝しないと。何もわかっちゃいません。愛の代わりに受け取ったお金に感謝しろというのですか。親の愛はお金ではありません。しかし、それも共働きが生んだ悲劇かもしれません。人間がわからない私は必死に読書に励みました。世界は広がり、人間の社会的に抑圧された交流をみることすらあります。愛はお金で買えますでしょうか。愛がお金で買えるのなら、私はいくらでもお金を愛に注ぎ込みます。少額ですが、私はそうしてきたのです。

 神様、私は今死にたい気持ちでいっぱいなのです。でも、体は生きている。健康そのものなんです。だから、死を私の頭にください。体は元気だから死ぬには体を痛めつけなくてはいけません。血管を切り裂いて真っ赤な浴槽で死ぬのが私の夢です。意識は遠のき、「ざまあみろ」と言いながら死にたいのです。それは、散々私を除け者にしてきた私にたいしての悪態です。

 夜の森に私を井戸に突き落としてください。まあるい月光が井戸の底から見えている間に死にたいのです。私の欲望はいかに死ぬべきかを考えることにあります。神様はその手助けをしてくれるのです。月を動かし、井戸を用意して、私に井戸に飛び込む動機を与えて欲しいのです。まだ、まだ足りないのです。恋人に、恋人ができたくらいでは。 

 なぜ、人は一度のセックスでは満足できないのでしょう。なぜ、恋愛をするのでしょう。なぜ、でしょう。私にはわかります。貧乏をしたくないだけ。せっかく、手に入れたキャリア、それは無教養でありますけれども、それを手に入れたくないのです。社会のいうことを唯々諾々と受け入れてきた人間たちが、信仰もなく科学的な理由を適当に口に出しているとき、私はこの世の地獄を見るのです。笑顔は消え去り、無表情な人々は急ぎ足で目的地に向かいます。まるで、ロボットです。目的がないのです。だから、目的を買っているのです。ああ、私はこんな世界を生きたくはないのです。静かに、眠らせてくれませんか。暖かいベッドの上で、永遠に瞼のあかない朝の来ない夜を私にくれませんか。ねえ、神様。あなたならできますよね。