記憶

 記録には残らないが、記憶に残る人間というのがいるだろうか。記録がなければ、いなかったに等しいのが現代ではないだろうか。記録がなければなかったことにできるのである。因果関係を辿れば必ずそこにいなくてはならない人物も、昨今の論理を超越し無視する世界においては因果は重要視されず記憶は忘れ去られていく。統一的な歴史観が形成され人々の個性は失われる。幸福な人間は多種多様だが、不幸な人間はどこもかしこも似ていると言われる所以もまたここにあると言って良い。幸せになりたがるのは、イギリス人くらいだと言われる、誰が言ったのかわからないが幸せになりたいという人間の意を読み取る時人、幸せなんて先になればどんなものなのかわかるだろうと考える。欲しがれば欲しがるほどに遠のく。決して手に入らない。もし手にして仕舞えばあとは不幸せになるだけじゃないか。幸せを掴むとはついには不幸を孕んだとも言える。